マイケル・ローゼン 作・クェンティン・ブレイク 絵・谷川俊太郎 訳/あかね書房
これは悲しんでいる私だ。
この絵では、幸せそうに見えるかもしれない。
じつは、悲しいのだが、幸せなふりをしているのだ。
悲しく見えると、ひとに好かれないのではないかと思って
そうしているのだ。
とはじまるこの絵本。
(この書き出しから心を鷲掴みにされてしまうのですが)
主人公の「私」はおじさん。
息子のエディーを亡くしてしまった「私」が主人公です。
こんな風に「失った悲しみ」をすくい取る絵本があるなんて・・・!!!
はじめてこの本にであった時、心が揺さぶられまくり・・・!!!
なにか大切な人やものを失った気持ちや
自分ではどうすることもできないとてつもない悲しみ。
生きていれば、どんな人でも、大小さまざまではあるでしょうが、
いろいろな悲しみがやってきて、共に過ごすこともあるでしょう。
それらすべての悲しみをすくい取る。
誰にも、なにも話したくないときもある。
誰にも。どんな人にも。誰ひとり。
ひとりで考えたい。
私の悲しみだから。ほかの誰のものでもないのだから。
と作中で語られます。
絵本の中では、
悲しみに暮れる日々を、
大切な思い出を、
描き出しています。
心に響き響き響き・・・・涙がこぼれます。
絵本の最後、ロウソクの灯の絵が描かれています。
これは希望の灯、、、?
あたたかそうなロウソクの灯。
訳者の谷川俊太郎さんは
「ロウソクの光は、悲しみの闇にひそむ明日へとむかう道を照らしだす」
と語っています。
悲しみを感じることは生きているということ。
「悲しい本」ではありますが、
読んだ後にあたたかい光を感じます。
誰かを失った方はもちろんのこと、
大切なペットを失った方、
大切な何かを失った経験のある方、
深い悲しみにとらわれたことがある方にも、
もちろん、
そんな体験をしたことがない方でも。
まさに大人のための絵本。
とはいえ、大人だけでなく、中学生、高校生にも。
高学年以上でも、何かニュアンスを感じ取ることができると思います。
是非是非是非、ご一読を!
谷川俊太郎さんの文章はやっぱり素晴らしい。
心に届きます。
クェンティン・ブレイクさんの絵も素晴らしいです。